英検準2級の語彙問題で点が取れない人必見！「文脈で覚える」効率的な単語学習法

「英検準2級の単語、覚えても覚えてもキリがない…」
「単語帳は完璧にしたはずなのに、なぜか語彙問題で点が取れない…」

多くの英検準2級受験者が、このような「単語の壁」にぶつかっています。高校中級レベルとされる準2級の語彙は、教育業界の目安として約2,600〜3,600語程度とされています。3級から推定で1,000語以上も増えるため、単純な丸暗記だけでは太刀打ちできなくなるのは当然かもしれません。

しかし、もしその学習法が、あなたの努力を無駄にしているとしたら？もし、もっと効率的で、しかも「使える」語彙力が身につく方法があるとしたら、知りたくありませんか？

この記事では、多くの受験生が陥りがちな「丸暗記」の限界を科学的根拠に基づいて解き明かし、英検準2級の語彙問題を攻略するための新しいアプローチ、「文脈で覚える」学習法を提案します。単なる精神論ではありません。事実とデータに基づいた、具体的かつ実践的なテクニックで、あなたの単語学習を根底から変えることをお約束します。

データで見る！英検準2級「語彙問題」のリアル

まず、敵を知ることから始めましょう。なぜ、あなたの単語学習は空回りしてしまうのでしょうか。その答えは、英検準2級の語彙問題の出題傾向に隠されています。

英検公式サイトから入手した過去3回分（2025年度第1回、2024年度第3回、2024年度第2回）の過去問を分析したところ、注目すべき傾向が明らかになりました [1]。下の表は、大問1の語彙問題で問われた内容の分類をまとめたものです。

問われた内容	出題傾向	特徴
熟語・句動詞・慣用句	各回3〜5問程度	継続的に高い割合で出題
単語問題（動詞）	各回3〜5問程度	最も多い品詞カテゴリー
単語問題（名詞）	各回2〜4問程度	日常生活に関連する語彙が中心
単語問題（形容詞・副詞）	各回1〜3問程度	比較的出題数は少ない

この分析で最も注目すべきは、「熟語・句動詞・慣用句」が継続的に高い割合で出題されているという事実です。具体的には、took action（行動を起こした）、in common（共通して）、turn into（～になる）、catch up with（追いつく）、ran across（偶然出会った）、went wrong（うまくいかない）、come true（実現する）、deal with（対処する）といった、複数の単語が組み合わさって特定の意味を持つ表現が頻出しています。

多くの受験生は、「英単語＝1対1の日本語訳」で覚えようとします。しかし、準2級で問われるのは、個々の単語の意味を知っていても推測が難しく、「知っているか、知らないか」が直接得点に結びつく表現なのです。

つまり、一語一訳の単純な暗記作業に終始している限り、あなたは重要な得点源である「熟語・慣用句」を逃し続けてしまう可能性が高いのです。これが、単語帳を何周しても語彙問題のスコアが伸び悩む、主要な原因の一つと考えられます。

あなたの学習法はどっち？「意図的学習」vs「偶発的学習」

では、どうすれば熟語や単語を効率的に覚えられるのでしょうか。そのヒントは、第二言語習得論における2つの学習アプローチにあります。それは「意図的学習（intentional learning）」と「偶発的学習（incidental learning）」です。

意図的学習とは、単語カードや単語帳を使い、「さあ、今から単語を覚えるぞ！」と明確な目的を持って取り組む、いわゆる「ザ・暗記」です。一方、偶発的学習とは、英語の物語を読んだり、映画を観たりする中で、単語を覚えることを主目的とせずに、自然と新しい言葉に触れていく学習法を指します [2]。

両者には、それぞれ明確なメリットとデメリットが存在します。

学習タイプ	メリット	デメリット
意図的学習	短時間で多くの単語に触れられる（効率が良い）学習の進捗が分かりやすい	知識が表面的になりがち単調で飽きやすい文脈や使い方が分からない忘れやすい
偶発的学習	「生きた」使い方やニュアンスが分かるコロケーション（語の繋がり）が身につくストーリーと結びつくため記憶に残りやすい	一つの単語を覚えるのに時間がかかる（効率が悪い）体系的な学習には向かない

Mollaali（2018）の研究ノートによれば、意図的学習と偶発的学習の両方のグループが類似したポストテスト結果を示したものの、偶発的学習は他の何かを学習している間に自然に発生するという特徴があります [2]。

多くの受験生が陥っているのは、この「意図的学習」への極端な依存です。単語帳をひたすらめくり、赤シートで意味を隠して暗記する。この方法は、短期間で大量の単語に触れるには効率的ですが、その知識は非常に脆く、すぐに忘れ去られてしまいます。そして何より、英検準2級で問われる「生きた」語彙力、つまり文脈の中で単語をどう使うかという感覚が全く養われないのです。

科学的根拠が示す「文脈で覚える」ことの絶大な効果

では、なぜ偶発的学習、つまり「文脈で覚える」と、単語は忘れにくくなるのでしょうか。それは、私たちの脳が情報を記憶する仕組みと深く関係しています。

Frances et al.（2020）の査読済み研究では、文脈の多様性を増加させることで、単語の想起、認識、および意味とのマッチング能力が向上することが判明しました [3]。また、Kang（1995）の学術論文では、文脈に埋め込まれたアプローチが知識転移、リスニング理解、長期記憶において最も効果的であることが示されています [4]。

「apple = りんご」という無味乾燥な情報の羅列は、脳にとって記憶すべき重要度が低い「記号」でしかありません。しかし、「昨日、木から落ちたりんごを拾って、みんなで食べた」というストーリー（文脈）の一部になると、その単語は情景や感情と結びついた「意味のある情報」へと昇華します。この「意味づけ」こそが、長期記憶の扉を開く鍵なのです。

文脈学習の効果は、単に記憶に残りやすいというだけではありません。意味と使い方をセットで覚えられるという点で、従来の暗記法を大きく上回ります。convince（納得させる）という単語を覚える際、I convinced her to join the project.（私は彼女をそのプロジェクトに参加するよう説得した）という例文に触れることで、「誰かを説得して『何かをさせる』」という具体的な使い方（語法）まで自然にインプットできます。これは、単語帳の「convince = 納得させる」という情報だけでは決して得られない、実践的な知識です。

語法・コロケーションが身につくという効果も見逃せません。ネイティブは make an effort（努力する）や take a break（休憩する）のように、単語をかたまり（コロケーション）で使います。文脈の中で単語に触れることは、こうした自然な語の結びつきを体感的に学ぶ絶好の機会となります。

スピーキングや長文読解にも役立つという相乗効果も期待できます。例文は、スピーキングや英作文における「型」として機能します。何度も触れた文は、いざという時に自然と口から出てくるようになります。また、長文の中で一度文脈と共に理解した単語は、次に登場した際にも意味を思い出しやすく、読解のスピードと正確性を向上させます。

Sternberg（2014）は著名な学術書の中で「ほとんどの語彙は文脈から学習される」と結論づけており [5]、文脈学習の重要性を科学的に裏付けています。このように、「文脈で覚える」学習法は、単なる暗記とは一線を画し、語彙の知識を深く、そして多角的に脳に刻み込む、非常に合理的なアプローチなのです。

今日からできる！「文脈で覚える」5つの最強実践テクニック

では、具体的にどのように「文脈学習」を日々の勉強に取り入れればよいのでしょうか。「読んで終わり」にしないための、記憶の深さと応用力を劇的に高める5つの実践テクニックを紹介します。

1. 自分だけの例文を作る

他人が作った例文をただ読むだけでは、記憶への定着は限定的です。最も効果的なのは、学んだ単語を使って「自分だけの例文」を作ること。自分の体験や感情、身の回りの出来事と結びつけることで、単語はあなたにとって「他人事」から「自分事」へと変わり、記憶に深く刻まれます。

実践のポイントとして、She apologized for being late. （彼女は遅刻したことを謝った）という例文を覚えたら、I apologized for forgetting the meeting. （私は会議を忘れたことを謝った）のように、主語や目的語を自分に合わせて書き換えてみましょう。この一手間が、単語を「使える知識」に変えるのです。

2. 例文ディクテーション

ディクテーションとは、耳で聞いた英文を一語一句書き取ることです。この学習法は、文脈学習と非常に相性が良く、単語のスペルはもちろん、文中での語順、冠詞や前置詞の使い方といった、日本人が苦手としがちな細部まで正確にインプットすることができます。

実践のポイントとして、単語帳に付属しているCDや音声ダウンロード機能を最大限に活用しましょう。音声を少しずつ止めながら、聞こえた通りに書き取る作業を繰り返します。「聞こえて、書ける」英語は、そのまま「話せて、読める」英語へと直結します。

3. フレーズで覚える

単語を一つ一つバラバラに覚えるのではなく、look forward to ~ing（～するのを楽しみに待つ）や be in charge of ~（～を担当している）のように、意味のある「かたまり（フレーズ）」で覚えることを意識しましょう。これにより、単語がどのような場面で、どのような語と結びついて使われるのかが体感的に理解でき、よりネイティブに近い感覚が身につきます。

実践のポイントとして、例文の中で使われている使えそうなフレーズを、そのままノートに書き出してみましょう。そのフレーズを使って、さらに自分だけの例文を作れば効果は倍増します。

4. 短時間・高頻度で繰り返す

記憶の定着には「繰り返し」が不可欠です。しかし、一度に長時間集中するよりも、「短時間・高頻度」で触れる方が、脳は情報を重要だと認識し、長期記憶に移行させやすいことが分かっています。エビングハウスの忘却曲線が示すように、記憶は時間と共に薄れていくため、忘れかけるタイミングで復習するのが最も効率的です。

実践のポイントとして、1日1時間まとめて単語を勉強するのではなく、朝・昼・夜、そして通学中の電車の中など、スキマ時間を見つけて「1回5分×12回」のように分散させてみましょう。同じ例文に何度も触れることで、記憶は着実に強化されます。

5. 音声と組み合わせる

文字情報（視覚）だけでなく、音声（聴覚）も一緒に使うことで、記憶の定着率はさらに高まります。単語や例文を目で追いながら、必ずその音声を聴き、そして自分でも声に出して真似てみましょう（シャドーイング）。これにより、正しい発音やアクセント、イントネーションが身につき、リスニング力とスピーキング力の向上にも繋がります。

実践のポイントとして、歩きながらや電車の中では、音声を聞き流すだけでも効果があります。目と耳、そして口をフル活用して、五感で単語を覚えていきましょう。

【重要】文脈学習の落とし穴と「最強のバランス」

ここまで「文脈で覚える」ことのメリットを強調してきましたが、一つ重要な注意点があります。それは、文脈学習だけに依存してはいけないということです。

van den Broek et al.（2022）の査読済み研究では、検索の利益は意図的な練習中よりも偶発的で文脈化された学習中では顕著でない可能性があることが示唆されています [6]。また、Elgort（2014）の学術論文では、文脈から新しい単語の意味を学習する能力は、読み手のL2語彙意味知識に依存することが示されました [7]。

これは、知らない単語ばかりの英文をただ読んでいるだけでは、語彙力は効率的に増えないという現実を示しています。特に、基本的な語彙力が不足している初級〜中級者にとっては、文脈から意味を推測すること自体が困難であり、学習が非効率になる危険性があります。

これは文脈学習の完全な否定ではありません。重要なのは、学習のフェーズに応じて「意図的学習」と「偶発的学習」を戦略的に使い分けること、そして両者を組み合わせたハイブリッドな学習法を確立することです。

最強の学習サイクル：意図的インプット → 偶発的定着

最も効率的な語彙学習のプロセスは、以下の2ステップで構成されます。

Step 1: 「意図的学習」で知識の種をまく段階では、まず単語帳やアプリを使い、ターゲットとなる単語の基本的な意味（一語一訳でOK）をスピーディーにインプットします。ここでは完璧に覚えようとせず、「この単語、見たことあるな」というレベルを目指しましょう。これが知識の「種まき」の段階です。

Step 2: 「偶発的学習」で知識を育てる段階では、その単語が含まれる様々な英文（例文、長文、ニュース記事など）に、意識的に触れていきます。一度インプットした単語に文脈の中で再会することで、「ああ、この単語はこういう風に使われるのか！」という発見が生まれます。この「アハ体験」こそが、知識の種を育て、長期記憶へと定着させる「水やり」の役割を果たすのです。

このサイクルを繰り返すことで、あなたは意図的学習の「効率性」と、偶発的学習の「定着率の高さ」という、両者の良いとこ取りをすることができます。単語帳で覚えただけの「死んだ知識」が、文脈という名の土壌で養分を吸収し、「使える知識」へと育っていく。これこそが、英検準2級の語彙問題を攻略するための、最も科学的でバランスの取れた学習戦略なのです。

まとめ：単語学習の常識を変え、英検準2級を突破しよう

本記事では、多くの英検準2級受験生が陥る「丸暗記」学習の限界と、その解決策として「文脈で覚える」学習法の科学的根拠および具体的な実践テクニックを解説してきました。

重要なポイントをもう一度振り返りましょう。英検準2級の語彙問題は**「熟語・句動詞・慣用句」が継続的に高い割合で出題される傾向があるため、一語一訳の暗記では対応が困難です。学習には「意図的学習」と「偶発的学習」があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。「文脈（ストーリー）」の中で単語に触れることで、脳は情報を意味のあるものとして認識し、長期記憶に定着させやすくなります。最も効果的なのは、「意図的学習（単語帳など）」で知識の種をまき、「偶発的学習（文脈での再会）」でその知識を育てる**というハイブリッドな学習サイクルを確立することです。

単語学習は、決して退屈な暗記作業ではありません。一つ一つの単語が持つ物語に耳を傾け、それらを自分の言葉として紡いでいく、創造的なプロセスです。「文脈で覚える」学習法は、その面白さを教えてくれるだけでなく、あなたの英語力を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。それは、テストのスコアを上げるためだけの小手先のテクニックではなく、コミュニケーションツールとしての英語を使いこなすための、本質的な力を養うための方法論です。

今日から、あなたの単語学習に「文脈」という視点を取り入れてみてください。一つ一つの単語が、単なる記号から、生き生きとした物語を語り始めるはずです。その変化を楽しみながら、自信を持って英検準2級の合格を掴み取りましょう。

参考文献

[1] 公益財団法人 日本英語検定協会. (2025年). 英検準2級 2025年度第1回 過去問. https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/kakomon/2025-1-1ji-p2kyu.pdf

公益財団法人 日本英語検定協会. (2024年). 英検準2級 2024年度第3回 過去問. https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/kakomon/2024-3-1ji-p2kyu.pdf

公益財団法人 日本英語検定協会. (2024年). 英検準2級 2024年度第2回 過去問. https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/kakomon/2024-2-1ji-p2kyu.pdf

[2] Mollaali, A. (2018). A Comparison of Incidental and Intentional Vocabulary Learning in English. DAS Journal. （研究ノート）

[3] Frances, C., et al. (2020). The effects of contextual diversity on incidental vocabulary learning. Nature Scientific Reports, 10, 13171. （査読済み学術論文）