英検5級は小学生でも合格できる?対象学年とおすすめ開始時期
近年、グローバル化の進展とともに、子どもたちの英語教育への関心はますます高まっています。特に、実用英語技能検定(以下、英検)は、英語力を客観的に測る指標として広く認知されており、受験者の低年齢化が進んでいます。日本英語検定協会の公表によると、2022年度は合計4,205,920人・小学生以下524,833人、2023年度は合計4,503,698人・小学生以下551,604人となっており※1、小学生の英語学習熱の高まりを如実に示しています。
こうした状況の中、「うちの子も英検を受けさせてみたい」「小学生でも合格できるのだろうか?」といった疑問や関心を持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。特に、英語学習の第一歩として位置づけられる英検5級は、多くの小学生が最初に挑戦する級であり、その合格可能性や適切な受験時期について、正確な情報を求める声が後を絶ちません。
本記事では、英検情報サイトを運営する皆様に向けて、小学生の英検5級受験に関する包括的な情報を提供することを目的とします。英検5級の基本的な情報から、小学生の合格可能性、推奨される対象学年、そして英語学習の開始時期に至るまで、事実に基づいたデータを基に、専門的な知見を交えながら詳しく解説していきます。この記事が、小学生のお子さんを持つ保護者の皆様にとって、英検受験を検討する上での有益なガイドとなることを願っています。
英検5級の基本情報
英検5級は、英語学習の第一歩として、多くの学習者が目標とする級です。そのレベルや内容は、小学生が挑戦する上で、事前に理解しておくべき重要なポイントです。ここでは、英検5級の基本的な情報について、詳しく見ていきましょう。
英検5級のレベルと内容
日本英語検定協会は、英検5級のレベルを「中学初級程度」と定めています。これは、具体的には中学校1年生から2年生で習う英語のレベルに相当します。求められる英語力は、「初歩的な英語を理解することができ、それを使って表現することができる」レベルであり、英語学習の基礎が身についているかどうかが問われます。
試験で求められる語彙数は一般的な目安として約600語とされており、これは中学校1年生の教科書に出てくる単語とほぼ同レベルです。5級は現在形中心の基礎が主で、過去形は4級で扱いが増える傾向にあります(※公式は時制を限定していないため、5級でもごく基本的な過去形が出る可能性はあります)。文法事項としては、三単現のs、be動詞と一般動詞の使い分け、現在進行形、代名詞など、中学英語の根幹をなす基礎的な内容が中心となります。
試験は、筆記試験とリスニング試験から構成されており、それぞれの試験時間は以下の通りです。
•筆記試験: 25分
•リスニング試験: 約20〜22分(年度の資料により表記差あり)
また、任意でスピーキングテスト(約3分)を受験することもできますが、これは級の認定には影響せず、別途合否が判定されます※3。
合格基準と統計データ
英検5級の合格基準は、CSEスコアという独自の指標で定められています。5級は850点満点中419点で合格となり※2、4・5級はリーディングとリスニングの2技能で判定されます。「6割正答」はあくまで目安で、最終判定はCSEスコアで行われます。問題の難易度によってスコアは変動するため、安定した合格を目指すなら7割程度の正答率を目標とすることが推奨されています。
合格率については、2016年度以降、級別の合格率は非公表です。旧公開データでは英検5級は高合格率(約8割)とされていました。なお、「年間合格者数 約25万人」という数字は推計値であり、公式の確定値ではありません。ただし、志願者数の増加傾向から見ても、多くの学習者が合格していることは間違いないでしょう。
小学生でも英検5級に合格できるのか?
英検5級のレベルが中学初級程度と聞くと、「小学生には難しいのではないか」と不安に思う保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から言えば、小学生でも英検5級に合格することは十分に可能です。ここでは、その根拠となるデータや、合格に必要な条件について詳しく見ていきましょう。
合格可能性の検証
小学生以下の英検志願者は、2022年度524,833人から2023年度551,604人に増加しており、これは多くの小学生が英検に挑戦し、そして合格していることの証左と言えるでしょう。
小学生の合格率については、学年別の公式データは公表されていません。ただし、体験談や民間調査によると、約75〜80%程度と推定されており、これは全体の合格率と比較しても遜色のない高い数値です。実際に、小学1年生で満点合格した事例や、塾に通わず家庭学習のみで合格したという報告もあり、適切な学習を行えば年齢に関わらず合格は可能です。
小学生が合格するための条件
では、小学生が英検5級に合格するためには、どのような条件が必要なのでしょうか。一般的には、1年から2年程度の英語学習経験があれば、合格に必要な基礎力は身につくと考えられています。具体的には、アルファベットの読み書きはもちろん、簡単な挨拶や自己紹介ができるレベルの英語力が目安となります。
また、家庭での学習環境や、保護者のサポートも重要な要素となります。子どもが英語に興味を持ち、楽しみながら学習を続けられるような環境を整えることが大切です。例えば、英語の歌や絵本に親しんだり、親子で英語のゲームをしたりするなど、日常生活の中に英語を取り入れる工夫が効果的です。
対象学年とおすすめ開始時期
小学生のお子さんに英検5級を受験させるにあたり、最も気になるのが「何年生で受けるのが良いのか」「英語学習はいつから始めるべきなのか」という点でしょう。ここでは、専門家の意見や最新の教育事情を踏まえながら、対象学年とおすすめの開始時期について詳しく解説します。
専門家が推奨する受験学年
多くの英語教育の専門家は、小学生が英検5級を受験するのに最適な学年として、小学3年生から4年生(8歳から10歳)を挙げています。この時期は、学校での英語学習が本格化する前の段階であり、英語に対する好奇心や吸収力が非常に高い時期です。また、ある程度の日本語能力が確立しているため、文法的な説明も理解しやすくなります。
もちろん、これはあくまで一般的な目安であり、お子さんの発達段階や英語学習経験によって最適な時期は異なります。もし、お子さんが小学3年生未満で、英語に触れる機会を設けたいと考える場合は、英検Jr.(ジュニア)から始めるのがおすすめです。英検Jr.は、リスニング中心のテストで、子どもたちが楽しみながら英語に親しめるように設計されています。
英語学習開始時期の考慮点
英語学習を始める時期については、さまざまな意見がありますが、近年の教育改革の流れを考慮すると、早期からの英語学習が有利に働くことは間違いありません。2020年度から全面実施された新しい学習指導要領では、小学3年生から「外国語活動」が必修化され、小学5年生からは「教科」として英語の授業が始まりました。これにより、子どもたちが英語に触れる機会は以前よりも大幅に増えています。
脳科学的な観点からも、早期の英語学習にはメリットがあることが分かっています。特に、言語の音声を聴き分ける能力は、幼児期にピークを迎えると言われており、この時期に英語の音に触れることで、ネイティブに近い発音を自然に習得しやすくなります。また、第二言語習得研究においても、日常生活の中で第二言語に触れる環境においては、学習開始年齢が低いほど、最終的により高い言語能力を身につける傾向があることが示されています。
個人差を考慮した判断基準
ただし、最も重要なのは、お子さん自身の興味や関心です。無理に英語学習を強制すると、かえって英語嫌いになってしまう可能性もあります。まずは、お子さんが英語に興味を持っているかどうか、英語の歌やアニメなどを楽しんでいるかといった点を観察し、学習を始めるタイミングを見極めることが大切です。また、家庭で英語に触れる機会をどれだけ作れるか、保護者がどれだけサポートできるかといった学習環境も、開始時期を判断する上で重要な要素となります。
合格に向けた具体的な準備方法
英検5級の合格を目指す上で、具体的な準備方法を知っておくことは非常に重要です。ここでは、必要な準備期間や効果的な学習方法、そして注意すべきポイントについて詳しく解説します。
必要な準備期間
英語学習の経験が全くない小学生が英検5級に合格するためには、一般的に3ヶ月から5ヶ月の準備期間が必要とされています。ただし、これはあくまで目安であり、お子さんの学習ペースや意欲によって大きく異なります。中には、効果的な学習法を取り入れることで、2ヶ月という短期間で合格するケースもあります。
大切なのは、無理のない学習計画を立て、毎日少しずつでも英語に触れる習慣をつけることです。例えば、「1日に単語を5個覚える」「週末に過去問を1回分解く」といった具体的な目標を設定すると、学習を進めやすくなります。
効果的な学習方法
英検5級の合格を目指す上で、最も効果的な学習方法は、「単語学習9割、リスニング対策1割」と言われています。英検5級は、基礎的な単語力があれば解ける問題が多いため、まずは単語を覚えることに重点を置くのが得策です。市販の単語帳やアプリなどを活用し、毎日コツコツと語彙を増やしていきましょう。
リスニング対策としては、過去問のリスニング問題を繰り返し解くのが効果的です。英語の音声に耳を慣らし、問題の形式に慣れることが大切です。また、家庭でのサポートとしては、保護者の方が問題文を読んであげたり、一緒に答え合わせをしたりするなど、積極的に関わってあげることが、お子さんのモチベーション維持につながります。
注意すべきポイント
英検5級の合否を分けるポイントとして、リーディング問題が挙げられます。リスニング問題は比較的得点しやすい傾向にあるため、リーディングでいかに点数を稼げるかが重要になります。特に、長文読解問題は、時間配分に注意しながら、落ち着いて解く練習を重ねましょう。
また、前述の通り、スピーキングテストは任意であり、級の認定には影響しません。まずは一次試験の合格を目標に、筆記とリスニングの対策に集中するのが良いでしょう。受験料は、本会場4,100円/準会場2,500円(5級)となっており、4・5級は一次試験のみです。※改定される場合があるため最新の公式ページで要確認してください。
よくある質問と回答
ここでは、小学生の英検5級受験に関して、保護者の方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. 小学1年生でも受験できますか?
A1. はい、受験できます。実際に小学1年生で合格しているお子さんもいます。ただし、ひらがなやカタカナの読み書きが前提となるため、その点がクリアできていれば問題ありません。英語力だけでなく、日本語の基礎力も考慮して判断することが大切です。
Q2. 英語を全くやったことがなくても大丈夫ですか?
A2. はい、大丈夫です。英検5級は英語学習の入門レベルですので、ゼロから始めても十分に合格を目指せます。ただし、合格までにはある程度の学習期間が必要です。まずはアルファベットの読み書きから始め、少しずつ単語や文法を学んでいきましょう。
Q3. 塾に通わないと合格は難しいですか?
A3. いいえ、そんなことはありません。市販の教材やオンラインの学習サービスなどを活用すれば、家庭学習だけでも十分に合格できます。大切なのは、お子さんに合った学習方法を見つけ、継続することです。保護者の方のサポートも大きな力になります。
Q4. もし不合格だったら、どうすれば良いですか?
A4. まずは、お子さんのがんばりを褒めてあげてください。そして、結果を分析し、どこが苦手だったのかを把握することが大切です。苦手な分野を重点的に復習し、次回の試験に向けて再挑戦しましょう。一度の失敗で諦めずに、前向きな気持ちで取り組むことが重要です。
まとめ
本記事では、小学生の英検5級受験について、合格可能性や対象学年、おすすめの開始時期などを詳しく解説してきました。
結論として、小学生でも英検5級に合格することは十分に可能です。適切な学習計画と、家庭でのサポートがあれば、英語学習の経験が浅いお子さんでも、合格を勝ち取ることができます。
重要なのは、お子さん一人ひとりの発達段階や興味・関心に合わせて、無理のないペースで学習を進めることです。英検5級は、あくまで英語学習の第一歩であり、その先の長い道のりへのモチベーションを高めるためのきっかけと捉えるのが良いでしょう。
この記事が、お子さんの英語学習の可能性を広げ、英検受験という目標に向かって親子で楽しく取り組むための一助となれば幸いです。
参考文献
•公益財団法人 日本英語検定協会. (n.d.). 5級の過去問・試験内容. Retrieved from https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_5/
•公益財団法人 日本英語検定協会. (n.d.). 受験の状況. Retrieved from https://www.eiken.or.jp/eiken/about/situation/
•じゅんぺーの家庭学習研究所. (2025, August 27). 英検5級合格体験レポート(小4)!塾なしで一発合格した勉強法を徹底公開. Retrieved from https://junpei-laboratory.com/eiken-level5-learning-method/
•忍者英会話. (2025, August 27). 英検5級は何年生レベル?何年生で受けるべき?取得が多い学年は?. Retrieved from https://eikaiwa.weblio.jp/ninja-eikaiwa/eiken5-howold
•朝日新聞. (2020, March 24). 「英語を学ぶなら早いほうがいい」第二言語習得論の専門家に聞く、早期英語教育のホントのところ. Retrieved from https://www.asahi.com/edua/article/13237147
脚注
※1 公益財団法人 日本英語検定協会「受験の状況」
https://www.eiken.or.jp/eiken/about/situation/
※2 公益財団法人 日本英語検定協会「CSEスコアでの合否判定方法について」https://www.eiken.or.jp/cse/
※3 公益財団法人 日本英語検定協会「4級・5級スピーキングテスト」https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/online_speaking